新宿南口にいきつけの裏DVD屋がある。駅に近く品数も豊富なので、3日に1回会社帰りに立ち寄るほどだ。
今年春先、その日も新な発見を期待し、俺は店内へ続く階段を上った。時間は夜10時ごろだったか。まずは新作コーナーに目を通し、売れ線ベスト10を確認してから、素人コーナーへ。外人コーナーは軽く素通りして、援助交際シリーズをくまなくチェックする。
レンタルビデオと違ってパッケージを手に取れないため買う買わないの判断材料はハガキ大の画面プリントのみ。いきおい歩みはのろくなる。
(これにすべきか…いやしかし、このシリーズはハズレが多いからな…。ちょっと待った、この肉ヒダは他ではなかなか見れんぞ)
ツライ。毎度のようにツライ。どれもこれも欲しくなるものばかりだ。
悩みに悩みつつ店内周遊を5度ばかり繰り返したとき、ふと背後に人の気配がした。振り返れば、一組のカップルが立っている。
男は40代前半、女は30代半ばってとこか。こんな場所に女連れで入ってくるとは、不倫カップルか?
しかし他人のマンコを見て、この女、興奮できるんかいな。ま、人様のことは放っておいたらよろしい。この忙しいのに、気にしてられるかい。
再び俺は壁に向かって、作品群のチェックに入った。
えっとこれはさっき見たよな。この子は前に買ったっけな…。…イカン、集中できない。女が店内にいるかと思うと、どうしても背中で意識してしまう。ったく、早く出て行きやがれ。
祈りが通じたか、2分ほどで2人の姿はなくなった。これでゆっくり選べるぞ。よーし、これにするか。んー、こっちも欲しいな。入店からおよそ40分結局1枚も買わずに店を後にした。どれも欲しいがために、どれも買えず。よくあることだ。
階段を下りると、道路にさっきのカップルが立っていた。男と目が合う。
「あ、すみません」
「はい?」
「あの、私たち、遊んでくださる男性を探してるんですけど…」
「はい?」
「もしお時間よろしければ、こいつと遊んでやっていただけないでしょうか」
なんだよこいつら。俺のこと待ってたのか。どういう了見だ。
「えっ、と言いますと?」
「すみません本当に、あのぅ実はですね….」
しどろもどろの説明は、最後まで聞かなくても理解できた。他人を交えて3Pでもしたいってんだろう。最近、こういう変態カップルが増えてるみたいなんだよな。
いかにも怪しい話だが、辺りが賑やかで、男もショボイ眼鏡リーマンだっため、不安はなかった。幸い、DVDは買わなかったので、急いで帰る理由もない。「少しだけなら」と付き合ってみることに。
「ありがとうございます。すみません変なこと言って」
「いえ、そんな…」
「何か買っていきますか?」
カップルは、すぐ目の前にる大人のオモチャ屋へ俺を誘う。今どき温泉街でも見ないような古ぼけた店だ。
「どれか好きなの選んでください。どれにします?」
弱ったなぁ。ただでさえ俺は優柔不断なんだよ。こんな状況でリクエストなんてできませんって。
「じゃあ、これにしますか」
男は棚の極太バイブを指差し、レジのおばさんに金を払った。女の意向などお構いなしだ。
「知らない人に突っ込まれてどうだ?」
男が提案する。
「ホテルも味気ないんで、公園にしますか」
強く反対もできず、わざわざタクシーで西口公園まで向かうことに。男が、公園中央部の芝生に女を座らせる。スカートの中はノーパンだ。
「コイツは見られるのが好きなんですよ。どうぞこれ使ってください」
新品バイブを手渡され、俺は女の股間にあてがった。
「もっと脚を広げなさい」
「はい…」
「ほら、もっと」
「はい…」
2人のやりとりを聞きながら、バイブを突っ込む。
「あっ」
「奥まで入れてやってください。ずっと奥まで」
「はい」
グイッ。
「あーーっ」
「どうだ、知らない人に突っ込まれてどうだ?」
「あーーんっ」
「気持ちいいのか、どうなんだ?」
「気持ちいい。もっと」
「もっとだそうです、ガンガンやってください」
いったい俺は何なんでしょう。バイブ動かし役?
にしても30代女のマンコのただれ具合たるや。陰毛も荒れ放題だし、尻もブツブツだらけ。いつも”一級品”と対時してる俺様の目はごまかせんぞ。
バイブプレイは20分ほど続いた。俺も満足させてもらいたかったが、2人は「それはNGなんですよ。病気が怖いですから」と、丁重に失礼なことをのたまう。誘っておいてそりゃないだろ。
駅まで送ってもらうタクシーの中で尋ねてみた。
「いつもああやって声かけるんですか」
「ええ、まあこう言うと失礼ですけど、飢えた男性がいらっしゃるかと思いまして」
飢えた男性で悪かったな。名誉にかけて言っとくけど、そんな汚いマンコじゃ満足してねーからな。
女も口を開く。
「あの店だけじゃないんですけど、週末にはよく探してるんですよ」
あれからおよそ3カ月。二度と彼らの姿は見ていない。
見ればガチで素人娘だとわかります
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「ご近所さんを探せ」という老舗有名サイトがある。
いくらインターネットはワールドワイドだ!と声高に叫ばれようとも、やはり近場の人間とコミュニケートしたほうが断然面白いわけで、このサイトも昔から大変な賑わいである。
大半の男女が、おいしいお店の情報交換やサークル会員募集をしている中、私の目的はやはり出会いだ。
同じ町内はさすがにマズくても、隣町ぐらいの子と知り合えれば簡単に会えるし、もしセフレになった暁にはしょっちゅう通いまくって……。
地域掲示板で女性の書き込みを見つけてはメールを送りつける戦法で、現に今まで4人ほど知り合い1人とセックスできたのだから、狙いは間違ってないんだろう。
その「ご近所さん」をきっかけに、今年7月、同じ市内に住む人妻チカと、メール交換を経てチャットで話す関係になった。
年齢は俺と同じ35才。ちょっと歳を食いすぎてるキライはあるが、が、条件はこっも同じ、文句は言えない。
〈今年で35ですか?〉
〈そうです。6月になったばかりで。チカは?〉
〈私は4月です。学年も一緒ですね〉
同級生ってことは、もしかしてお向かいに住むミナちゃんかも。あるいは小学校のクラスメイトだったりして。いや、市は同じでも町が違うようだからその心配はないか。
しかし、地元情報や夫婦生活の不満などを話すうちに2人には意外な接点があることが発覚する。
彼女が地元放送局の高校野球予選を見ていたため、話題が高校時代に飛んだときだ。
〈チカは高校も市内なん?〉
〈うん、そうやで〉
あっけらかんと情報を公開する女だ。個人を特定される心配はないのか。ちなみに我が市には、私立公立合わせて5つの高校がある。
〈へえ、どこ?〉
〈さぁ 笑〉
〈商業?〉
〈ううん、普通科〉
〈どこやろ…。たぶんS高かな。こういう女、多かったもんな 笑〉
〈Y校〉
〈え、Y校!?〉
まさかのまさか、我が母校である。
〈俺もなんやけど!〉
〈うっそ~クラスは?〉
〈1組〉
〈私、4組。イッシーのとこ〉
石井か。たしかにいたなそんな先生。つーか、てことは君は誰なの?
〈さあ、誰でしょう 笑〉
チカか…本名じゃないだろうが、チカチカチカ…中野千香子?
〈ピンポーンよくわかったね!〉
〈マジで?俺、斉藤やけど知ってるかな?〉
〈バスケ部の?覚えてるー〉
〈マジマジ?うっそー、こんなことあるんや。ビックリ!〉
このときの高揚を伝えるには、20年前の青春に触れておかなければならない。
当時の私は、弱小バスケ部に籍を置く平凡な高校生で、モテる存在ではなく、長い童貞生活を余儀なくされていた。
一方の中野は1年生のときから学園祭のミスコンテストに他薦されるほどの大人びた容姿で、2年のときには実際にも輝いた。大学生の彼氏がいるとの噂を問いたこともある。
童貞ニキビ男と学校一の美女に、接点などあるはずもなし。よもやこんな形で親しくなろうとは。
チカと呼び捨てにするのも照れくさくなり、私は苗字にさん付けで会話を続けた。
〈まさかこんなとこで中野さんと会えるとは思わなかったよ〉
〈久しぶりだね~。覚えててくれたんや。2年のときクラス一緒やったやん〉
〈そうそう、でもあんまり話したことなかったような。いつも俺ら男と群れてたし〉
〈馬場君とかもいたね。みんなどうしてるの〉
〈全然知らんわ……誰も連絡取ってないし〉
〈へえ、久しぶりにみんなの顔見てみたいなあ。どうしてるんやろ〉
私にはこういうサイトを使っていることに対する後ろめたさがあったのだが、彼女にそんな様子は微塵もない。まるで近所のスーパーで同級生に出会ったような感覚みたいだ。
考えてみれば、『ご近所さん』は、ギラギラした出会い系サイトではないのでコソコソする必要はないのかもしれない。
「じゃあ2人で同窓会やろうか」
軽い冗談を振ると、元ミスY高はあっさり乗ってきた。
「うん、ええかもなー」