「ご近所さんを探せ」という老舗有名サイトがある。
いくらインターネットはワールドワイドだ!と声高に叫ばれようとも、やはり近場の人間とコミュニケートしたほうが断然面白いわけで、このサイトも昔から大変な賑わいである。
大半の男女が、おいしいお店の情報交換やサークル会員募集をしている中、私の目的はやはり出会いだ。
同じ町内はさすがにマズくても、隣町ぐらいの子と知り合えれば簡単に会えるし、もしセフレになった暁にはしょっちゅう通いまくって……。
地域掲示板で女性の書き込みを見つけてはメールを送りつける戦法で、現に今まで4人ほど知り合い1人とセックスできたのだから、狙いは間違ってないんだろう。
その「ご近所さん」をきっかけに、今年7月、同じ市内に住む人妻チカと、メール交換を経てチャットで話す関係になった。
年齢は俺と同じ35才。ちょっと歳を食いすぎてるキライはあるが、が、条件はこっも同じ、文句は言えない。
〈今年で35ですか?〉
〈そうです。6月になったばかりで。チカは?〉
〈私は4月です。学年も一緒ですね〉
同級生ってことは、もしかしてお向かいに住むミナちゃんかも。あるいは小学校のクラスメイトだったりして。いや、市は同じでも町が違うようだからその心配はないか。
しかし、地元情報や夫婦生活の不満などを話すうちに2人には意外な接点があることが発覚する。
彼女が地元放送局の高校野球予選を見ていたため、話題が高校時代に飛んだときだ。
〈チカは高校も市内なん?〉
〈うん、そうやで〉
あっけらかんと情報を公開する女だ。個人を特定される心配はないのか。ちなみに我が市には、私立公立合わせて5つの高校がある。
〈へえ、どこ?〉
〈さぁ 笑〉
〈商業?〉
〈ううん、普通科〉
〈どこやろ…。たぶんS高かな。こういう女、多かったもんな 笑〉
〈Y校〉
〈え、Y校!?〉
まさかのまさか、我が母校である。
〈俺もなんやけど!〉
〈うっそ~クラスは?〉
〈1組〉
〈私、4組。イッシーのとこ〉
石井か。たしかにいたなそんな先生。つーか、てことは君は誰なの?
〈さあ、誰でしょう 笑〉
チカか…本名じゃないだろうが、チカチカチカ…中野千香子?
〈ピンポーンよくわかったね!〉
〈マジで?俺、斉藤やけど知ってるかな?〉
〈バスケ部の?覚えてるー〉
〈マジマジ?うっそー、こんなことあるんや。ビックリ!〉
このときの高揚を伝えるには、20年前の青春に触れておかなければならない。
当時の私は、弱小バスケ部に籍を置く平凡な高校生で、モテる存在ではなく、長い童貞生活を余儀なくされていた。
一方の中野は1年生のときから学園祭のミスコンテストに他薦されるほどの大人びた容姿で、2年のときには実際にも輝いた。大学生の彼氏がいるとの噂を問いたこともある。
童貞ニキビ男と学校一の美女に、接点などあるはずもなし。よもやこんな形で親しくなろうとは。
チカと呼び捨てにするのも照れくさくなり、私は苗字にさん付けで会話を続けた。
〈まさかこんなとこで中野さんと会えるとは思わなかったよ〉
〈久しぶりだね~。覚えててくれたんや。2年のときクラス一緒やったやん〉
〈そうそう、でもあんまり話したことなかったような。いつも俺ら男と群れてたし〉
〈馬場君とかもいたね。みんなどうしてるの〉
〈全然知らんわ……誰も連絡取ってないし〉
〈へえ、久しぶりにみんなの顔見てみたいなあ。どうしてるんやろ〉
私にはこういうサイトを使っていることに対する後ろめたさがあったのだが、彼女にそんな様子は微塵もない。まるで近所のスーパーで同級生に出会ったような感覚みたいだ。
考えてみれば、『ご近所さん』は、ギラギラした出会い系サイトではないのでコソコソする必要はないのかもしれない。
「じゃあ2人で同窓会やろうか」
軽い冗談を振ると、元ミスY高はあっさり乗ってきた。
「うん、ええかもなー」
西新宿、三●ビル。様々な会社や店が入っており、オレもその中のとある場所で働いている。実は少し前から、このビルで不穏な噂がささやかれるようになった。
ビル●階にある身障者トイレが空かずの間だというのだ。件のトイレは、ビルの正面入口からエスカレータに乗った場合、フロアを降りて右奥に設置されている。通常の男女トイレは左側なので、健常者ならまず立ち寄らないトイレだ。
そしてこの噂、何を隠そう、事実だ。
なんせオレは噂を聞きつけてから何度も見に行っている。カギの閉まった「使用中」がほとんどで、一度だけ開いていたことがあったから、正確には“ほぼ開かずのトイレ”ってところか。
心霊とかそんなのはさすがに信じてないけど、このビルにあのトイレを利用するような障害者なんてそれほど多くないわけで、どうにもオカシイのだ。
ホームレスのオヤジにでも使われてるのか? そんな奇妙な話であっても人間ってのは日がたてば忘れてしまう生き物だ。オレもやがて気にかけなくなり、このビル内で毎日仕事をしていた。
ある日、昼食を終えてビルに戻ったときのことだ。
あっ、例のトイレに誰かが向かってる! その人影は二つあった。スーツ姿の男と、それに続いて一人の女だ。オレはとっさに後を追ったが、すぐにカギは閉められ、使用中の表示になってしまった。
衝撃的な光景だった。あのトイレに人が入っていくこと自体はじめて見たうえに、それが男女2人組だなんて。中で何をやってるんだ…。
頑張って頭をひねる必要もなく、その答えは想像できる。おそらくあのトイレ内では男女がエロいことをしてるのだ。休憩時間が終わるため、オレは後ろ髪をひかれながらもその場をあとにした。
が、仕事中もトイレのことばかり考えてしまう。中でやってることはわかったけど、まさかあの2人が一日中、いや、毎日のようにあの中にいるはずがない。
だったら他にもカップルが、ラブホ代わりに利用してるのだろうか? タダでセックスできる穴場としてその界隈には知られた場所だったりして…そうかな。きっとそうだ。
続いて頭をよぎったのは、自分でもアホらしいと思うが、セックス音が聞こえるかもしれないとの期待だ。
あのトイレが閉まっているときにこっそり近づいて耳をそばだてれば、アンアンクチュクチュといやらしい音が聞こえるに違いない。生のセックス音声だなんて、いいオカズになりそうじゃん!
翌日、例のトイレ付近でまわりに誰もいないのを見計らったオレは、ゆっくりトビラに近づいた。いつものように使用中の文字が表示されている。
よしよし、いい音を聞かせてくれよ~。ドアに耳を近づける。中からは何も聞こえてこない。
おかしいなぁ。カギが閉まってるんだから入ってるはずなのに。 しばらくそうしていたが変化は訪れない。ためしにノックでもしてみるか。
トントントン。
そのとき、中からはっきりと女の声が聞こえた。
「はーい、ちょっと待ってね」
え、なに、開けるの? 焦るオレを尻目にドアが開いた。なにがなんだかわからぬまま、女に手をとられて中に引っぱりこまれる。…あれ、キミ、1人?
急いでカギを閉めた女は、ニコっと笑顔を見せた。
「メールの人ですよね? じゃあ先にお金もらっていいですか?」
仕事中のOLみたいな格好をした女が手をさしだす。30才手前くらいだろうか。清潔感はある。状況から見てこれはエンコーだ。
「メール」ってことは、出会い系サイトかなんかで客を募ってここでやってるのだろうか。こうなったら客のフリをするしかない。
「えっと、いくらだっけ?」
「7でお願いします」
7万円ってことはないだろうから、7千円だよな。受け取った女はそれを財布にしまい、手馴れた様子でカバンからウエットティッシュを取りだした。
「じゃあ便座に座ってね。あ、声は出さないでよ」
ズボンを下ろされ、ティッシュでチンコを拭かれる。入念なフキフキが終わり、そのままパクっとくわえた。
これがまた、なんというか、フェラが非常にウマい。すぐに勃起した息子は巧みな舌づかいと緩急をつけた舐めかたですぐにノックアウトされてしまった。
その時間、およそ3分。おそるべしトイレエンコー女だ。
「いつもここでエンコーしてるの?」
「そうだよ。でも、ご飯とかは外で食べてるし、夜は帰ってるから」
彼女はほぼ毎日のようにこの場にやってきては、あくせく出会い系サイトにアクセスし、客をとっているそうだ。そう、つまりこのトイレがいつも閉まっているのは、彼女のせいだったのだ。
ちなみに7千円はフェラの価格で、なんと本番もここでいたすらしい。
その場合はイチゴーだとか。こんな便利な子を使わない手はない。
「これからは直接来てもいいかな?」
「いいけど、来る前にメールちょうだい。たいていここにいるから」
アドレス交換をして、こっそりトイレを出た。彼女を残したままで。
恥ずかしながら、オレはその後も何度か利用させてもらっている。興味のある方は、ノックしてみればいいだろう。プレイ中じゃなければ開けてくれるはずだ。
当記事は2016年1月26日に掲載した『新宿のオフィスビルにある「開かずのトイレ」 ワリキリ女が援交のプレイルームに使ってる!?』